車椅子での外出は、さまざまな不安がありますよね。
車なら、介護者がいれば少し気もラクですが、バスや電車などの公共交通機関を利用するとなると、本人にとっても、介護者にとっても、不安が大きいものだと思います。
でも、今はバリアフリー化が進んで、車椅子や障害のある方にも対応できるようあちこちで整備されつつあります。
どこでも安心に、とまでは言い切れませんが、経験してみると「出かけてみてよかった!」ときっと実感できると思います。
駅・電車でのバリアフリー対応
車いすの母と初めて電車を利用して出かけたのは、最寄駅から2駅先のみどりの窓口に新幹線の予約をしに行ったとき。
「たった2駅だし、介護者の私がついているのに、駅の介護サービスを利用するのは大げさかな」という気持ちがあって、けっこう勇気がいりました。
初めて車いすで電車に乗るのに何かあったら困るし、旅行前の練習も兼ねていたので、思い切ってお願いすることにしましたが、この経験で駅でのサポートへの抵抗がなくなり、一気に旅行へのハードルを下げることができました。
まずは、私たちが経験した駅での介助サービスについて紹介します。
駅での介助サービスについて
駅での介助サービスは、駅員さんがホームまで案内や、電車への乗り込み時に折り畳みのスロープを開いて乗車をサポートしてくれるサービスです。実際に駅で見かけたことのある方も多いと思います。
このサービスは、乗車時の介助だけでなく、乗車駅から降車駅に連携連絡をとってくれて、降車駅でも、駅員さんがスロープを手に乗車したドアの停車予定の位置でスタンバイして待っていてくれます。
電車が到着するとドアの外に駅員さんがもう立って待っていてくれるので、感動してしまいました。
旅行の当日には、東京駅での新幹線への乗り換え時に、駅員さんが車椅子を押してホームへ案内してくれたので迷わずスムーズに乗り換えできました。
無理せず介助サービスを利用する
この介助サービスをためらってしまう方もいるかもしれません。障害者の方だけでなく、高齢の方や骨折などで車椅子を利用している方は、このサービスを受けることができますが、つい遠慮してしまうこともあるのではないかと思います。
とくに付き添いの方が同行する場合などは、自分たちで何とかしようと思いがちです。
介護者の私がいても利用していいの?
経験してみて言えることは、車椅子での乗車に慣れていて、サポートなしで不安なく乗車できる方以外は、たとえ同行する介護者がいても介助サービスをお願いしたほうがいいと思います。
なぜかというと、このサービスは、車椅子の方だけにサポートしているのではなく、ほかの乗車の方もスムーズに事故なく乗車できるようにするシステムだと思うからです。
車椅子で乗車しようとすると、周りの方にも戸惑いがあったりするかと思います。
乗車した後も、居場所に困ることもあります。車椅子の方と一般の乗客の方、お互いに気兼ねがあったり戸惑ったり。
でも実際には、車内に車椅子用のスペースがとられていることも多いので、介助サービスを利用すれば駅員さんがそのスペースに乗車するよう、乗客にも配慮しながら誘導してくれます。乗り込みにモタモタしてしまって、発車を遅らせたり周りに迷惑をかけたりせずにすみます。
障害のある方でも、骨折の方でも、お年寄りの方でも、とにかく車椅子で電車を利用する際には、このサービスを利用させていただいたほうがいいです。
利用時はできるだけ事前に連絡する
駅での介助サービスは、利用時(きっぷ購入時)に窓口で駅員さんにお願いします。この場合は、係員の方の手配で時間がかかることがあるため、すぐに電車に乗れないかもしれません。私たちも、きっぷを購入してから2本くらい電車を見送りました。
なので、予定がわかっているなら事前に連絡しておくほうがベターです。とくに新幹線利用などの遠出の場合は、降車駅との連携確認などの手続きがあるので、列車の予約時に介助サービスもお願いしておくようにします。
車いすで駅をご利用の場合
- 駅をご利用の際には、駅係員がホームまでのご案内および列車の乗降のお手伝いをさせていただきます。駅係員の手配などが必要な場合がありますので、事前にご連絡いただければよりスムーズにご乗車いただけます。
- 混雑時や列車運行上支障がある場合、また時間帯などによってはお待ちいただく場合がございますので、あらかじめご了承ください。
新幹線や特急列車のバリアフリー対応
次は、新幹線や特急列車のバリアフリー対応について紹介します。
車いすで新幹線や特急を利用する場合は、専用の車いす対応座席を予約するのがベターです。
新幹線や特急の車いす対応席の利用について
在来線(普通列車)の場合は上記のような車椅子優先スペースとなりますが、新幹線や特急列車の場合は「車椅子対応席」といって、車椅子で乗車した場合に利用しやすいように配慮された座席があります。
障害者の方だけでなく、もちろん骨折やケガ等で車椅子を一時的に利用している場合や、高齢の方で歩行が困難で車椅子を利用されている場合でも利用できます。
車椅子対応席は、通常2列や3列あるシートの通路側の1席が外されていて、そこに車椅子を設置するように設けられたスペースになっています。
ひじ掛けを跳ね上げ、車いすからシートに移乗して、そのスペースに畳んだ車いすを設置し固定しておくことができます。
もしくは、移乗しない場合は、そのスペースに車いすのままシートベルトで固定することもできます。
車椅子対応席は、乗降口の近く、一番前列か最後列でトイレにも近い場所にとられています。
新幹線や特急の車いす席の予約について
車いす対応席は、みどりの窓口に直接か電話で申し込みます。当たり前ですが、予約が埋まっているととれないので、早めに申し込みます。
ご予約時及びご購入時
新幹線または在来線特急列車には、車いす対応座席をご用意している列車があります。車いす対応座席のお申し込みは、以下のとおりです。
- 駅・電話でのお申し込み方法 車いす対応座席のご利用にあたっては、ご予定が決まり次第、みどりの窓口へ直接または電話でお申し込みいただき、お申込みいただいた駅にてご乗車までにきっぷをお求めください。ご乗車1カ月前の日の10時から承りますが、満席等の場合は、ご希望の列車にご乗車いただけない場合がありますので、お早めのお申込みをお願いいたします。
新幹線・在来線特急列車停車駅 電話番号- WEBでのお申し込み方法(JR東日本の新幹線) JR東日本の新幹線を車いす対応座席でご利用になる場合、WEBでのお申し込みを受け付けております。
※新幹線のご利用がJR東日本の新幹線駅から出発のものに限ります。
JR東日本新幹線車いす対応座席WEB申込み
私が実際に障害者割引を利用して車いす席を予約したときの様子をこちらで紹介しています▼
新幹線や特急のバリアフリートイレ
ほぼすべての新幹線や特急にはバリアフリートイレが設置されています。
どちらも車いす対応座席のある車両の入り口付近にあります。オストメイト対応型も増えてきています。
たとえば新幹線(N700系)のバリアフリートイレはこんな感じ▼
特急列車(E353系)のバリアフリートイレはこんな感じ▼
多目的室の利用について
新幹線には「多目的室」という個室があるのをご存じでしょうか。
多目的室というのは、名前のとおり多目的に使える個室なのですが、誰でも自由に使えるわけではありません。
障害のある方や車椅子利用など身体の不自由な方優先の無料の個室スペースです。あいている場合には、授乳の必要がある乳幼児連れであったり、体調がすぐれない方などが利用できます。
個室内には2席分が横並びになっているシートがあって▼
シートを展開するとベッドにもなります▼
横になることも、足を伸ばして座ることもできます。(介助者や荷物置き用に折りたたみ椅子も1つ置いてあります)
多目的室について
- 山陽・北陸新幹線では、全ての列車に「多目的室」を設置しております。「多目的室」のご利用はおからだの不自由なお客様が優先となりますが、おからだの不自由なお客様のご利用がない場合には、授乳や着替え、お客様の体調の思わしくないときなどにご利用いただけます。ご希望の方は乗務員までお申し付けください。
東京駅の車椅子待合所
あまり知られていませんが、JR東京駅には『車椅子待合所』という車いす利用者のための待合所が用意されています。
2か所あって、まずは丸の内南口の改札を出てすぐのところにある車椅子待合所▼
中に入るとこんな貼り紙▼
中の様子はこんな感じ! かなり広いスペースに、ベンチや椅子が並べられています▼
さらに、この待合室内には多機能トイレもあります。オストメイト対応で、ベビーシートも介助ベッドもあります▼
もう1か所は、東海道・山陽新幹線のりば(八重洲中央南口)の手前にある車椅子待合所▼
エレベーターを降りてすぐのところにあり、待合所の外にはなりますが多機能トイレも近くにあります。
中の様子はこんな感じ! ひたすら広いスペースです▼
一般の待合所はいつも混み合っていて、車いすだと通りづらいし居場所にも困る感じですが、こちらはゆったり落ち着いて過ごせます。
私たちが利用したときは、行きと帰りの新幹線の乗り換え時に、介助サービスのスタッフの方が案内してくれました。
乗り換えまでの待ち時間をここで過ごし、トイレタイムなどを済ませて、時間になったら介助サービスの方がまたここにお迎えに来て、乗り換え車両のホームに案内してくれました。
介助サービスの案内がなくても、車いす利用の場合は利用できるスペースなので、駅構内図を載せておきます。
赤い枠で囲んだところが『車椅子待合所』です▼(JR東日本 東京駅の構内図 より引用)
積極的にサービスを利用する
車椅子で電車や新幹線、それに限らず公共交通機関などを利用するとき、バリアフリーのサービスは積極的に活用させてもらったほうがいいと私は思います。
障害者でなくても、ケガや高齢の場合も同じです。
たしかに係員の方の手を煩わせてしまうこともありますが、無理して自力で何とかしようとして、かえって大きな事故につながったり周囲に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。
係員の方はみなさんとても気持ちよく対応してくれます。もちろん中には比較的クールな方もいました。人間なので、そのときのコンディションにもよるかもしれませんし、こちらの感謝の言葉や態度も大切だと思います。
でも、こういったサービスを利用してスマートに行動することができると、ハンディキャップがあっても格段に世界が広がって自信や充実感につながるのを実感しています。
次は、車いす利用の家族との旅行プランの立て方についてです。よかったら参考にしてください。
車いす利用の母と新幹線で金沢へ行きました▼
ノスタルジックな観光列車『特急ゆふいんの森号』で由布院に向かった様子を紹介しています▼
ロマンスカーで箱根旅!のようすはこちら▼